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- 2023.03.02 Thursday
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JUGEMテーマ:名言・名文
芥子咲けばまぬがれがたく病みにけり 松本たかし
昭和七年「ホトトギス」八月号発表。
私の好きな俳人、松本たかし二十六歳のときの句である。
十四歳のとき肺尖カタルと診断され、二十歳で能役者への道を諦める。
この句を詠んだ時のたかしは結婚もして、俳人として生きることを決めていた。
しかし第二の宿痾と言うべき神経症に悩まされていた。
芥子の花、極彩色の薄い花びらによるものか、どこか危うげな感じがする花である。
この実から阿片が取れるという。
この花が咲くようになると病が重くなる。
「まぬがれがたく」という表現が非常に強く感じられ、読者に迫ってくる。
「病みにけり」というとき、多分に精神的なものを感じさせる。
たかし個人の病を詠んだように見えるが、この句には普遍性があるように思う。
自然の中に生きる人間は、芥子が咲くという何気ないことを契機に病むのである。
また、自分の死を見詰める人間というのは「まぬがれがたく」病むのであり、
そういう意味では、誰しもが精神的な病を抱えているのが人間であると。
作者の芥子の花を見つめる視線と自分の病を見つめる視線は同じものである。
半年ぶりのブログ更新です。
年明けから少し体調を崩していました。
だからこの句を、という訳ではないですが。
今は元気です。
これからもよろしくお願いします。